Abstract : |
「第1章 序言」 1953年, Gibbonにより人工心肺装置が初めて臨床応用されて以来, 心臓外科は飛躍的な発展をとげた. 装置にもいろいろの改良が加えられ, 体外循環の病態生理の解明とあいまつて, 今日では数時間の開心術も可能となつた. また心臓移植をはじめ, 人工弁移植など重症例が手術対象に加わるにいたつた. 一方, 数多い術後合併症に対する予防あるいはその治療についても, 多くの先人達により絶えず検討が加えられてきた. これら合併症のうちで最も重大なものの一つである, いわゆる低心拍出症候群は術直後から2, 3日目をピークとして現われるが66)74)92)94)102), これは致命的な二次的合併症を惹起しやすいことから, 近年とくに注目されるようになつた. したがつてその対策, あるいは術後管理にも進歩がみられる. とくにbed sideで手軽に実施出来る色素希釈法による心拍出量測定法の確立は, その循環動態解明にきわめて有意義であり10)60)61)70)75), またIsoprotorenolを中心とする一連の薬剤やpace makerの使用は, 直接心拍出量を増大させてしばしば著効を示す. 一方, 酸塩基平衡異常の補正, 呼吸管理などの補助的療法については, これら薬剤の感受性を保持する上にもきわめて重要であると考えられるが, その基盤は出血性ショック, 体外循環に関する研究に負うところが多く, いわゆる心臓性ショックについても, 心筋硬塞に関する報告が多い. 著者は純粋な低心拍出症候群の研究を目的とし, その一型として同一の条件を設置しやすく, また比較的単純な型のlow outputと考えられる心タンポナーデをとりあげ, とくにBuffer投与と酸塩基平衡, 心拍出量との関係を観察し, さらに呼吸機能, 肺組織像について検討した. なお, 細胞内酸塩基平衡をうかがう一助として赤血球内pHについて検討した. |