Abstract : |
われわれは現在まで14例の心臓外傷の手術経験を有し, うち9名を手術的に救命することができたので, これらの手術症例を中心に報告した. 症例は1:37才男, 心尖部刺傷で直接縫合によつて全治, 2:29才男, 直接刺傷による冠動静脈瘻, 瘻閉鎖術によつて全治, 3:交通事故による鈍的遠達力による心室中隔瘤と欠損, 体外循環による瘤切除および欠損閉鎖, 全治. 4:63才男, 猟銃誤射による心室中隔留弾体外循環による留弾摘出, 全治. 5:50才男, 交通事故による左心室壁挫傷, 低体温により手術を行うも死亡. 6:31才女, 事故による伏針, 伏針除去により全治. 7:28才男, 事故による肺動脈損傷, 直接縫合により全治. 8:19才女, 交通事故により左冠動脈枝損傷, 心嚢内血液除去により全治. 9:22才男, 心室壁刺傷, 縫合および冠動脈直接縫合, 好転. 10:29才男, 心室壁, 中隔直達刺傷, 直接縫合を行うも死亡. 11:8才女, 鈍的遠達力による心室中隔欠損, 低体温で直接縫合を行うも死亡. 12:33才男, 鈍的遠達力による心室壁中隔穿通, 体外循環による根治, 死亡. 13:鈍的遠達力および刺傷, 直接縫合を行うも死亡. 14:42才女, 直達刺傷, 体外循環により直接縫合, 全治のようである. これらの症例は刺傷7例, 圧挫創3例, 伏針1例, 留弾1例, 鈍的遠達力2例である. 心室壁損傷を伴つたものが12例, 中隔欠損を伴つたものが6例, 冠動脈損傷を伴うものが5例, 心嚢内大血管損傷が2例であつた. 手術成績は9例生存し, 死亡率は35%と必ずしも良好ではなかつた. これらの手術経験を中心に心臓外傷の臨床上の問題点, とくに最近における傾向と, 心臓外傷を手術する立場からみた種々の損傷の型, 合併症などについて考案を加えた. 今後交通外傷を中心に, 心臓外傷も1つの注目さるべき外傷の1つとして救急医療上の問題であると結論した. |