Abstract : |
貫壁性心筋硬塞に陥ると, ほとんど例外なく硬塞部位あるいは虚血部位に一致して心筋収縮に異常をきたす. シネ左室造影上, この限局的な左室壁の収縮異常のことをAsynergy1)2)と呼ぶ. Asynergyの種類がDyskinesis(paradoxical systolic expansion)の如く効率の悪い動きであつたり, またその種類とは関係なく, Asynergyの範囲が広い場合には, 左室の拍出効率を低下せしめるとともに, 非硬塞部心筋に対しても負荷を与えるので, 内科治療に抵抗する心不全や重症不整脈あるいは狭心症などの原因となる. それ故, この場合, 硬塞発症後一定時間が経ち, 冠血行再建術による効果が期待しえないとき, Asynergy部位の外科的切除が1つの治療手段となりえる. 最近われわれは急性心筋硬塞発症後1ヵ月経つても左心不全症状ならびに心室性期外収縮の出現がつづく1症例に対し, 緊急左室造影を行つたところ, 左室壁に広範なAsynergyを認め, また同時に左室機能の著しい低下を認めたので, Asynergy部位の切除を行い劇的な効果を得たので, ここに報告し, 加えてAsynergy切除の適応ならびに心室瘤とAsynergyとの違いなどにつき若干の考察を加えたい. |