Abstract : |
絨毛性腫瘍は高率に肺転移をきたす疾患であるが, その外科治療に関する報告は散見されるにすぎず手術成績は不良の場合が多い. 私どもは1961年以降この問題にとりくんできた. とくに, 1970年よりは絨毛性腫瘍の抗腫瘍剤としてその優秀性が認められたmethotrexate, actiomycin-Dを術前に併用し手術成績の向上をはかつた. 本論文は自験15例の絨毛性腫瘍肺転移の外科治療について報告する. 絨毛性腫瘍は日本産婦人科学会の分類によると, 胞状奇胎, 破壊性奇胎, 絨毛上皮腫となつている. それぞれその性格は種々であるため, 絨毛性腫瘍を扱う場合その分類を明確にする必要がある. 15例は絨毛上皮腫10例, 絨毛上皮腫の疑い2例, 破壊性奇胎1例, 分類不明1例よりなり, さらに腫瘍ではないが絨毛組織の肺塞栓1例がふくまれている. 15例の手術成績は3例が術後1ヵ月, 4ヵ月, 10ヵ月に脳転移で死亡している. これら3例は絨毛上皮腫であり, 肺手術時期の尿中human chorionic gonadotropinの測定してある2例は術前の化学療法にもかかわらず32,000単位/lと, 4,000単位/lの高値であつた. 他の12例は術後2ヵ月より13年7ヵ月にわたり健在である. このうち肺手術時期の尿中HCGの測定してある10例は1,000単位/l以下であつた. 以上の成績より私どもは絨毛性腫瘍肺転移の外科治療についてつぎのように考えている. 全例にまず化学療法を行うべきである. 化学療法にもかかわらず陰影の残存するものには外科治療を考える必要がある. そしてその手術適応はClagett, Thomfordの提唱している悪性腫瘍肺転移切除の適応の四原則を満足するものでなければならない. さらに, 術前の化学療法により尿中HCGを可及的低値に, 少なくとも1,000単位μ以下に, できればLH-level以下にすることが手術成績を良好にする. また, 肺手術はできる限り肺機能を温存する術式を選ぶべきである. |