Abstract : |
拍動の末梢循環におよぼす影響を知るために, 下行大動脈に除拍装置を挿入し, 胸管リンパ流量を測定した結果, 拍動流では, 定常流に比して, 20~30%のリンパの増量をみた. これは拍動が末梢リンパの運搬機能を増すことによるものである. 上記の結果を基に, 試作拍動型ポンプと現在広く使われているDeBakey型のローラーポンプを使つて, 拍動流および定常流潅流による完全体外循環時の末梢循環を比較検討した. 結果は以下に記す. 1. 拍動流潅流の方が, 動脈圧は安定しており, 門脈圧の上昇も軽度であり, きわめて少量の輸血量で, 安定した潅流を維持することができた. 2. 拍動流潅流では, 定常流潅流に比して脳脊髄液および胸管リンパ液のpHの低下が少ない. 3. 拍動流潅流の方が, 動脈血と脳脊髄液のPo2が高値を示し, また, 動脈血と静脈血のPco2が低値を示した. 4. base excessについては, 拍動流の方が動脈血, 静脈血, 脳脊髄液および胸管リンパ液で低下が少ない. buffer baseについても, 拍動流の方が脳脊髄液および胸管リンパ液で, 減少が軽度である. 5. 潅流中の胸管リンパ量は, 拍動流の方が, 安定し, 少量で, 術前値を保つた. 6. 潅流後の肝, 脾, 回腸の組織学的変化は, 拍動流の方が軽度であつた. 以上より, 試作拍動型ポンプによる潅流の方が, 現行の定常流ポンプより, 末梢循環が良好に保たれる. |