Abstract : |
後天性心臓弁膜症125例(手術例84例を含む)に心血管造影ACGを実施し, Dodge法によつて左室容積の計測を行つた. 対象とした心臓弁膜症例は, 1)僧帽弁狭窄症(MS)38例, 2)僧帽弁閉鎖不全症(MI)23例, 3)僧帽弁狭窄兼閉鎖不全症(MSI)13例, 4)大動脈弁閉鎖不全症(AI)11例, 5)大動脈弁狭窄症(AS)および大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症(ASI)8例, 6)MS+AI24例, 7)MI+AI8例の7群である. これらの症例の左室容積, すなわち左室拡張終期容積(LVEDV), 左室収縮終期容積(LVESV), Ejection Volume(EV), Ejection Fraction(EF), を計測し, これらの計測値と, 手術所見および手術成績との関連を検討することより, 心臓弁膜症の手術適応の判定にこれらの左室容積の計測値が, 応用できるかどうかを検索した. えられた結論は以下の通りである. 1)MSでは, 左室EDVが97ml/m2(正常値上限)以上の場合には, 手術はMVRとなる可能性が大であり, 逆に左室EDVが正常値以下の場合には, 交連切開術によつて手術の目的が達成される場合が多い. 2)MIおよびMSIでは, 左室EDVが200ml/m2以上を示す症例は, 僧帽弁口の逆流が高度で, すでに重症に陥つているので, なるべく早い時期にMVRが行われるべきである. 3)AIでは, 左室EDVが200ml/m2以上を示す症例は重篤な臨床症状を示すことが多く, 早急にAVRの適応と考えるべきである. 4)ASおよびASIの左室EDVは, 弁膜疾患7群中, 最小値を示した. 5)MS+AIの左室EDVは, AIの逆流度が中等度以上の場合には, AIの逆流度とよく相関するが, AIが軽度な場合には, AIの影響を蒙ることが少ない. 6)MI+AIの左室EDVは, 大きい値を示す. その値から僧帽弁の病変を推測することは困難であるが, 大動脈弁口の逆流度は可成り正確に判定される. |