Authors : |
安斉徹男*, 稲村信正*, 松本弘*, 浅海秀一郎*, 野本親男*, 川辺昌道*, 小林剛一*, 中島宏治*, 平井明文*, 谷口棟一郎*, 尾内弘次*, 坂内五郎*, 大木俊英**, 飯野昭夫**, 井田仁一**, 泉雄勝* |
Abstract : |
当教室で手術を行った流出路VSDを以下のごとく4型に分け, 各型別にAIならびに大動脈弁尖沈下の発生頻度を調べた. 1)VSDの分類;I型:室上稜上部欠損, a-肺動脈弁とVSD上縁との間に筋組織を欠くもの, b-有するもの. II型:室上稜下部欠損, a-室上稜およびその下方にあって膜性部の一部におよぶもの, b-三尖弁中隔尖に接し膜性部の全体におよぶもの, である. 2)VSDの位置とAIおよび大動脈弁尖沈下の発生;I型aとbとの間でAIおよび大動脈弁尖沈下の発生頻度には有意差がみられた. I型とII型の間でも同様の結果が得られた. VSDの大きさと年齢との関係に, AIおよび大動脈弁尖沈下を加味すると, I型bはI型aよりもII型aに類似を示した. 以上の結果より, 室上稜上部VSDにおけるAIおよび大動脈弁尖沈下の発生には, 肺動脈弁下筋組織の意義の大きいことを知った. したがって, 術前にVSDの位置ことに肺動脈弁直下のものの診断が可能なら, AI発生を未然に防ぎ得ると考え, 手術所見をもとに臨床検査所見を検討してみた. 3)室上稜上部VSD, ことにI型aの術前診断について;聴診上の最強点が第2肋間胸骨左縁にみられることが多い. 心電図で標準肢誘導のS波が浅い, RV1+SV5値が小さくてSV1+RV5値がやや大きい, 不完全右脚ブロックの出現が少ない, QRS電気軸が正常ないし軽度右軸偏位であった. 心臓カテーテルでは酸素飽和度の上昇が右室流出路ないし肺動脈でみられた, 心電図で右室肥大がないのに肺動脈-右室圧差をみる例がある. 以上のことからI型を疑い得るが, I型aを示唆するには到らなかった. VSDの位置診断には左室造影が最も有効であろうが, 通常の検査とはいえぬであろう. 心音図についてはことにI型aと関連して, 今後の検討を必要とするところである. |