Abstract : |
心室中隔欠損根治術後の状態を調査したところ, 術前高肺血管抵抗を有した症例(Rp/Rs≧0.33)の術後経過, ならびに遠隔成績にたいして, 完全右脚ブロックが強い悪影響をおよぼしていることを示唆する新知見を得た. 1)術後心胸郭比の変動:Rp/Rs<0.33の群では, 完全右脚ブロックを示した群, 示さなかった群の間に差がなく, ともに良好な心胸廓比の減少を見た. Rp/Rs≧0.33の群では完全右脚ブロックを示さなかった群の心胸廓比の改善は良好であったが, 完全右脚ブロックを示した群の心胸廓比の改善はきわめて不良であった(p<0.05). 2)術後Rp/Rsの変動:Rp/Rs≧0.33の群において, 完全右脚ブロックを示した群の術後遠隔期のRp/Rs値, ならびに術前より遠隔期へのRp/Rsの低下値の大きさが, 完全右脚ブロックを示さなかった群に比し著明に悪かった(両者ともにp<0.05). 3)術後早期の脈拍数の変動:Rp/Rs≧0.33の群において, 完全右脚ブロックを示した群の脈拍数の術後増加は, 完全右脚ブロックを示さなかった群に比し有意に多かった(P<0.05). 以上の結果にもとずき, 完全右脚ブロックがRp/Rs≧0.33群の患者の術後右室機能を相当に低下せしめること, さらに左室機能にも影響をおよぼす可能性の有無について論じた. このため高肺血管抵抗例に対しては, 完全右脚ブロックを起す頻度の少ない手術法, すなわち経右房的または経肺動脈的欠損口閉鎖術が推奨されるアプローチであることを提唱した. |