Abstract : |
拍動流による体外循環装置を開発し, 動物実験によって, この有効性を確認した. 拍動ポンプは円筒形を成しており, 内臓するラテックス製の円筒心室膜と, これを固定する外枠および人工弁より成っている. このポンプは分解, 組立てが容易に行われる構造になっており, ポンプの設計仕様に関しては, もっとも有効に拍出量が得られるよう計算値より求めて作成したものである. ポンプ駆動は圧搾空気圧の調節と拍動数の調節によって行われ, 0~4.5L/minまで拍出可能である. 雑種成犬において拍動流体外循環を行い, 潅流量を80~100ml/kgで維持した. 動脈圧, 頚動脈, 腎動脈の血流は生理的波形に近い拍動波形が得られた. ポンプのみの循環回路で溶血量を測定し, ローラポンプと比較した. 15時間後の溶血量は拍動ポンプの方が1/3と少ない値を示した. 拍動流体外循環とローラポンプによる無拍動流体外循環を行い, 両者における血行動態を比較した. 腎血流量は体外循環開始時に両者とも開始前値の50%に低下したが, 拍動流潅流では前値の70%まで回復した. これに対し, 無拍動流潅流では腎血流量の回復増加は認められなかった. 静脈還流量は拍動流潅流では常に良好に維持されたが, 無拍動流では漸次減少をした. 計算で求めた単位時間あたりの循環血液量に対する漏出血流量は拍動流では0.1±0.3%, 無拍動流では1.5±0.7%であった. 無拍動流で3時間以上潅流を続けると, 動脈血圧は50mmHg以下にまで低下するが, これを拍動流に切り変えると, 約30分後には90mmHgまで回復増加し, 同程度の血圧を長時間安定して維持した. 臨床用として実用化するための拍動流人工心肺装置の必要条件と, 拍動流体外循環に関する生体の反応について考察を加えた. |