Authors : |
伊藤昌平, 工藤龍彦, 開沼康博, 森川哲夫, 森克彦, 安藤正彦, 三森重和, 橋本明政, 今野草二, 高尾篤良 |
Abstract : |
Fallot四徴症に総肺静脈還流異常症を合併した2例と, Ebstein奇型を合併した1例を経験したので報告する. 3例は術前に診断が確定せず, 剖検によつて合併奇型が明らかになつた. 症例1は心臓部還流型総肺静脈還流異常症を合併したFallot四徴症である. 術前および術中にはこの合併奇型に気付かず, Fallot四徴症の心内修復のみを行つたため, 術中死亡した. 剖検によつて冠静脈洞に還流する総肺静脈還流異常症の合併を確認した. カテーテル検査では右室での酸素飽和度の上昇があり, 総肺静脈還流異常を示す所見があつた. 症例2は混合型総肺静脈還流異常症を合併したFallot四徴症である. 術前に上大静脈に還流する総肺静脈還流異常症の合併を診断し, 手術はFallot四徴症の心内修復と上大静脈に還流する動脈血を左房に導く右房内導管の作製, 肺静脈と左房との吻合を行つた. 剖検により肺静脈の還流部位は上大静脈と横隔膜下の2個所が確認された. 症例3にEbstein奇型を合併したFallot四徴症である. 術前および術中にはこの合併奇型に全く気付かなかつた. 剖検によりEbstein奇型の合併を確認した. 右室造影では三尖弁閉鎖不全, 前尖の拡大および右室下縁には右室側に落ち込んだ三尖弁弁輪を示す陰影欠損があり, Ebstein奇型を示す所見があつた. Fallot徴症は種々の合併奇型を有するが, 総肺静脈還流異常症あるいはEbstein奇型の合併は極めてまれである. これらの合併奇型の臨床診断は困難な場合が多いが, 再検討してみるとこれらの合併奇型を示唆する所見があり, Fallot四徴症の診断にはこれらの極めてまれな合併奇型を念頭に置いて注意深く検索する必要がある. |