Abstract : |
「緒言」開心術における完全房室ブロックの発生は, 心室中隔欠損症, Fallot四徴症, 心内膜床欠損症などでは従来約10%前後の頻度でみられるといわれてきたが1)~5), この刺激伝導路損傷を防止するには, 術中直視下に刺激伝導路を確認する事が大切である. われわれは心内各所をペーシングし, それに対応する心筋の反応の仕方より刺激伝導路を確認する方法について, 実験および臨床応用を行つたので報告する. 「方法および対象」心内の刺激伝導速度は, 心房筋0.8~1m/sec, His束1~1.5m/secに対し, 房室結節では0.02~0.05m/secと遅く6), このため房室結節に伝わつたインパルスは房室結節を通過するのに80msec前後を要し, 心電図のP-R間隔の半分近くを占める. そこで心房内各所をペーシングすると, His束をペーシングした場合は固有心房筋をペーシングした場合にくらべ, ペースメーカーのスパイクとそれに対応するQRSまでの時間(S-R間隔と略す)において, インパルスの房室結節通過時間, すなわち80msec前後の時間短縮があるはずである. |