Abstract : |
雑種成犬を用いて自発的心室細動下に常温血液希釈体外循環を行い, 体外循環における細動心の局所心筋血流量, 血流分布および局所血管抵抗におよぼす潅流圧の影響を検討した. 局所心筋血流量は放射化微粒子法を用いて測定し, つぎの結果を得た. 1)自発細動心における左室自由壁の局所心筋血流量は潅流圧が90mmHgのとき, 体外循環前(対照)と比較して有意に増加し, 乳頭筋>心内膜下層>心外膜下層の血流量勾配は対照時と同様に保持されていた. 2)自発細動心において潅流圧が90mmHgより60mmHgに低下すると, 左室自由壁の心内膜下層および心外膜下層の血流量はともに有意の低下を示さなかったが, 乳頭筋の血流量は有意に低下した. 潅流圧が90mmHgより30mmHgに低下すると左室自由壁全層にわたって血流量は有意に低下し, 血流量勾配は乳頭筋<心内膜下層<心外膜下層と逆転した. 3)自発細動心における左室自由壁の内層外層血流量比(I/O比)は潅流圧90mmHgのとき対照時と比較して有意差を示さなかったが, 潅流圧の低下とともに有意に低下した. 右室自由壁のI/O比は自発細動心では対照時より有意に上昇し潅流圧変化の影響を受けなかった. 4)自発細動心においては対照時に比して局所血管抵抗は著減し, 潅流圧90mmHgより60, 30mmHgと低下するにつれ左室自由壁とくに心外膜下層では局所血管抵抗の低下が進行したが, 乳頭筋ではこの低下が進行しなかった. したがって, 自発細動心では左室自由壁の内層は外層よりも血管拡張予備力が小さく, とくに乳頭筋ではこの予備力がほとんど認められなかった. 以上の結果から, 細動心における心内膜下心筋障害の発生機序に及ぼす潅流圧の影響について考祭を加えた. |