Authors : |
川島康生, 宮本勝彦, 松田暉, 島崎靖久, 広瀬一, 大西健二, 森透, 藤田毅, 小塚隆弘, 曲直部寿夫 |
Abstract : |
生後7ヵ月の心室中隔欠損を伴った大血管転位症に解剖学的根治手術を行い成功した. 手術は超低体温を用いた循環停止下, およびこれに引き続く体外循環下に施行した. まず前方に位置する大動脈の後側方から出る2本の冠動脈を大動脈壁の一部とともに切離し, これを後方に位置する肺動脈の前面に作った2コの側孔に吻合した. 大動脈を水平に, 肺動脈を右側がやや末梢側, 左側がやや中枢側になるように斜に切断し, 大動脈の末梢側と肺動脈の中枢側を右側で, 大動脈の中枢側と肺動脈の末梢側を左側で吻合した. 大動脈壁に出来た側孔はパッチで閉鎖し, 次いで心房中隔欠損を直接縫合で, 心室中隔欠損は経右室切開によりパッチを用いて閉鎖した. すなわち大血管のレベルにおいて両大血管の転換を行い, 血流を正常化した. 術後の血行動態は良好であったが, 痙攣を発生しそれ以後は不安定な経過をとったが, 次第に回復して術後4ヵ月の現在健在である. 本法の成功例は文献的にはいまだ1例の報告をみるにすぎず, いまだ数例の成功例を数えるのみと思われ, 本邦においては本例が最初の成功例と思われる. |