Abstract : |
人工弁による二弁置換術の成績向上を目的として, 二基の人工心臓ポンプを備えた血液循環モデルによるin vitroの実験から, 大動脈弁および僧帽弁に入った二人工弁による血行動態を検討した. まず, 二弁置換術(A+M)における人工弁種の至適な組合せを知るため, 現在広く用いられているBjork-Shiley弁とボール弁(試作)を用いて検討した. その結果, 大動脈弁にシリコン・ボール弁を, 僧帽弁にBjork-Shiley弁を用いた組合せが, 血行動態的に最も優れていた. また, Bjork弁同志の組合せは最も劣っていた. これはBjork弁閉鎖時におけるディスク周囲からの逆流量が予想以上に大きいことが最大原因と考えられ, このことは, 特にriskの高い重症例にては, 十分考慮すべきと考える. 次に, 大動脈弁と僧帽弁ともにBjork-Shiley弁を用いる場合, 両弁サイズ間に“至適組合せ”なるものが存在するか否かを調べた. その結果, 左室心筋への負荷を最も軽くするためには, 1つの僧帽弁サイズに対し, 至適な大動脈弁サイズの存在が証明された. その組合せは, 29M-23A, 27M-21A, 25M-19A, 23M-19A, 21A-17Aであり, さらに, この組合せよりAサイズが小さい場合は最悪の条件であることを知った. 弁置換における人工弁種の選択は, 単に血行動態面のみから論じられべきものではない. しかし, 左室心筋予備力の著しく低下した重症例では, 血行動態的改善が最優先されるべきで, ここで弁種の組合せということも十分考慮されねばならない. また, 人工弁サイズに関しても, 従来の如く挿入され得る最大径の弁を機械的に植込んでいたことに対し, 十分反省する価値のあることを, 今回の実験データーは示唆しているものと考える. |