Abstract : |
心筋硬塞患者100例につき, asynergyの部位および範囲と左室機能, 臨床病態ならびに予後との相互関係を調べ, 慢性期硬塞切除の適応につき検討を加えた. その結果は以下の如くで, 硬塞範囲を示すakinesis部分の周径比(ΔL)と, 冠動脈の障害状態が良く反映された指標である機能心筋収縮率(ΔD)とにより, 各症例の重症度と予後をある程度推測しえることが示された. (1) ΔLは左室機能障害, 臨床病態ならびに予後と明確な相関を示し, akinesis部分の定量的評価法として有用であることが示された. (2) ΔLが34%以下の例(A群50例)は, 1枝冠障害例が多く(84%), 左室機能障害, 臨床病態とも軽微で, しかも平均3年の予後調査では, 死亡例が1例, 心不全が3例と良好な結果であった. それゆえA群では, 心機能改善を目的とする硬塞切除は不必要と考えられた. (3) ΔLが35%以上の例(B群50例)は明らかな左室機能障害を示し, その程度は, 心室瘤形成の有無, 硬塞部位, 主冠動脈病変数などと関係なく, ΔLの増加に伴い段階的に増強した. また死亡例が22%, 心不全が74%にみられ, 血行動態上も, 臨床上も問題が多いので, 切除手術の適応と考えた. B群の中でも, ΔDにより以下の如く, 各症例の重症度と予後が判定可能であった. (4) B群中, ΔDが30%以上と良好な例(B-I群23例)は, 1枝冠障害例(74%)や心室瘤合併例(74%)が多いので, akinesis部分の切除のみで好結果が期待される(good risk群). (5) B群中, ΔDが20~29%の例(B-II群23例)は, 多枝障害例が52%と多く, 予後調査でも死亡例(30%)や心不全合併例(82%)が多いので, 早期手術の必要性があり, かつ手術に際し, 心筋庇護や, AC-bypassを併用するなどして予後をゆだねる機能心筋の温存を計ることが特に重要と考えられた. 当群をfair risk群と考える. (6) B群中, ΔDが19%以下の例(B-III群4例)は, 多枝障害(75%)と広範なasynergyを示し, 臨床病態, 血行動態とも最悪で, 予後調査でも, 4例中3例が検査後1年以内に死亡し, 他の1例は重症心不全で入院を繰返しており, 自然予後, 手術予後とも悪いことが示された. 本群を慢性硬塞切除のpoor risk群と考える. |