Abstract : |
食道癌は進行癌が多いため, 治療成績は他臓器の癌に比較して劣っている. したがって生存率から予後判定の因子を論じた文献は少ない. 国立がんセンターで切除手術を行った症例の中で37例が5年生存した. 手術直接死亡を除くと5年生存率は20%であった. これらの症例と昭和50年12月までに手術した400例とを比較して, 長期生存に関係する因子を検討した. 性別では女性の方が成績が良く, 5年生存率は男性の13%に比較して女性は36%であった. X線所見をみると, 占居部位では下部の方が成績が良く, 型別では腫瘤型が比較的良い成績であった. われわれの症例では80%が術前照射を行っているので, これも関係しているかも知れない. 初診時の陰影欠損の長さでは7cm以下は余り変りがないが, 8cm以上になると著明に低下した. したがって7cmまでが根治手術の適応である. 病理組織学的検査では, 外膜浸潤の程度をみると, 筋層にとどまっているものは良いが, a1とa2ではほとんど差がなく, a3になると著明に低下した. また, リンパ節転移はn(-)が良いのは当然であるが, n1(+)とn2(+)はこれに劣るが余り差がなく, n3になると著しく悪く5生例は存在しない. また術前照射の効果と組織標本で大星, 下里の分類でみると, 非常に効果があったIII, IVでは5年生存率も良く, ある程度効果のあったIIbでも良いが, IIa以下になると低下する. また組織学的に壁内転移の認められる症例は予後が悪く, 5年生存例は存在しなかった. |