Authors : |
高野久輝, 川島康生, 康義治, 藤田毅, 森透, 橋本聡一, 北村惣一郎, 曲直部寿夫, 吉矢生人*, 田中一彦*, 島田康弘*, 山崎登自*, 丸山公子* |
Abstract : |
開心術後の低心拍出症候群および急性心筋硬塞に続発する重症心不全や心原性ショックは, 各種薬剤の投与や心蘇生法の発展にもかかわらず, 依然として死亡率が高い. 教室ではかかる重症循環不全患者に対して, 大動脈内バルーン・パンピング(IABP)を用いて治療に当ってきたが, 未だ満足すべき成績ではない. そこで教室での経験を総括して, IABPの効果と限界に検討を加え, 本法の成績向上のための指針とした. 開心術に伴ってIABPを施行した症例は, 体外循環からの離脱を目的としたもの2例, 開心術後に起ってきたleft ventricular pump failureに対するもの4例の計6例である. 前者はともに体外循環を離脱し得たが, 1例はIABPを離脱し得なかった. 後者は1例が急速な循環動態の改善をみてIABPを離脱し, 1例は11日間の後に離脱した. 他の2例はIABP依存となった. 以上の個々の症例を分析検討して, 次の知見を得た. 補助循環により重症心不全の進行を少なくとも一時期は阻止し得るが, 術後の病態, 重症度は症例によって異なっており, その後の経過も一様でない. IABPにより冠血流量を増加させるのが主目的の場合は, vasopressorを併用してdiastolic augmentation効果を増大させ, また, afterloadの軽減が主目的の場合はvasodilatorを併用してsystolic unloading効果を増大させる. すなわちIABPはvasopressorやvasodilatorと併用する事により相乗効果を発揮し, これら薬剤の使用量を少なくする効果がある. IABPは不可逆性ショックへと進行しない早期に適用する事が肝要で, 適用基準の確立が必要である. われわれはinotropic agentを投与しなければ良好な循環動態が得られないと判断した時点が, 適用時期であると考えている. 以上IABPの効果と限界, 更により効果的な使用法に関して検討を加えたので報告する. |