Abstract : |
僧帽弁膜症98例, 大動脈弁膜症7例の計105例を対象とし, 131IMAAを用いる肺シンチスキャニングを施行し次の結果を得た. 1)僧帽弁膜症の肺シンチグラムは, 全例において肺下野の血流分布障害を示し, MSではMIよりも高度であった. 大動脈弁膜症では, 巨所肺血流分布障害は認められなかった. 2)弁膜症における肺血流分布上/下比と, 左房平均圧, 肺動脈平均圧およびPp/Psとの間には正の相関が認められたが, 上/下比と心係数および肺血管抵抗との間には相関が認められなかった. 3)肺血流分布上/下比は弁膜症患者が心不全状態に陥ると著明な上昇を示し, 臨床的に心不全状態が消退しても, 心不全以前の上/下比に回復するには, 3~4週間の経過を必要とした. 4)肺血流分布上/下比2.4以上という値は, 左房平均圧30mmHg, 肺動脈平均圧50mmHg, Pp/Ps 70~75%以上の重症弁膜症であることを示す. 弁置換などの手術は, 肺血流分布上/下比が2.4以下となるまで待機した後に実施されることが望ましい. 5)AIのみによっては肺血流分布上/下比は上昇しない. AIで, もしも上/下比が上昇しているならば, それは心不全状態に陥っていることを示すものである. 6)弁膜症に対する手術で, 肺血流分布上/下比は症状の改善とともによく下降したが, 術後3カ月を経ても下降を示さない場合には, 術後に心不全状態が持続していることを示すもので, 慎重な観察を要する. 7)僧帽弁膜症に対する手術の後6カ月~5カ年の遠隔成績で, 肺血流分布上/下比は, 1.1~1.3を示し, 正常値0.8以下に下降した症例はほとんどみられなかった. この事実は, 器質的な非可逆性変化がなお肺に残存していることを示すものと考えられる. |