Abstract : |
心臓外傷の中で, 極めて稀な, 心外膜胸膜部, 右方破裂兼心脱出例を, 54歳男子の災害事故で, 経験したので報告した. 本症例は, 土木工事中, 土砂崩れのため生き埋めとなり, 左鎖骨骨折, 右多発性肋骨骨折, 肺挫傷, 右血気胸の診断にて, 受傷後16日目のギプス固定時に, 突然, 循環虚脱に陥り, 当科へ搬入された. 気管切開, 胸腔内排液管挿入にて, 呼吸困難は軽減したが, その後に撮った胸部レントゲン写真で, 右胸部下方に異常陰影をみるようになった. 心電図, 透視および右心房造影にて, 術前診断した. 右開胸にてはいったところ, 右心膜が約16cm縦に破裂しており, その部分より脱出した心臓により上下大静脈が圧迫されており, これによる還流障害が考えられ, これがショックを突然発来した一因子になり得たことが推察された. 破裂心膜より脱出心を還納するとともに, 心膜を有茎弁状にT字型にして, 心臓の再脱出を防いだ. 手術後より心尖部にLevine2度の収縮期雑音を聴診し, 外傷性僧帽弁閉鎖不全症の疑いで経過観察を続けた. 術後4年7カ月目の左心室造影ではとくに異常は認められず, 右心房造影では心臓はほぼ正常位置にあった. 心膜破裂兼心脱出について, 2~3の考案を行い, 術前診断における右心房造影の有用性, 心脱出予防の手術方法, 予後について述べた. |