Authors : |
北村信夫, 入山正, 梅津光生*, 堀籠秀和*, 堀江明*, 島倉唯行, 工藤龍彦, 小柳仁, 橋本明政, 今野草二 |
Abstract : |
当外科での人工弁置換症例のうち, Bjork-Shiley弁による二弁置換術(A+M)37例の予後を検討した. 内分けはBjork-Shiley弁同志の組合せが33例, 他の4例では僧帽弁はBjork弁であるが, 大動脈弁をあえてStarr-Edwardsボール弁にしたものである. 全体で, 急性期死亡7例(18.4%), 晩期死亡4例であった. これらの死因は, 激症肝炎1, 慢性腎不全からの尿毒症1, 他9例は主として術直後からの低拍出症候によるものであった. 合併症として, 脳塞栓その他のThromboembolismは全く経験していない. 術前評価の各種パラメーターのうち, 予後と良く相関したのは右房圧と左室駆出率(EF)であり, とくにEFでは0.5以上のものに死亡0であったのに対し, 0.4台では40%の死亡, さらに0.4未満では全例死亡しており, 予後を非常によく反映した. ところが, 大動脈弁をとくにStarr・ボール弁にした最重症の4例では, EF平均0.28であるにもかかわらず死亡は0であった. このことは, われわれが先に, 血液循環モデルを用いたin vitro実験よりのdata, すなわち「ボール弁とBjork弁間の比較では, A弁・ボール弁, M弁・Bjork弁との組合せが血行動態的に最も秀れている」との結果とよく一致していた. 次に, Bjork弁同志の組合せにおける弁サイズにつき検討した. 生存例を予後から見ると著効例では, その78%が, われわれの実験で知られた“弁サイズにおける至適組合せ”になっており, 不満足例の86%は, この観点よりみると, M弁サイズに比して, A弁サイズが小さすぎる組合せ群に入っていることを知った. 以上より, 今後の二弁置換術の成績をさらに向上させるには, 使用する人工弁の種類, さらにはそのサイズの組合せにおいても十分考慮する必要があると考える. |