Abstract : |
完全大血管転位症(TGA)剖検例53例について各々の肺動脈病変の重症度を形態学的に捉え, 単純心奇形の心臓中隔欠損症(CSD)剖検例27例のそれと年齢および血行動態の面から比較解析して, 肺高血圧症に伴うTGAの肺動脈病変の特異性を究明した. 従来用いられているHE分類では症例間の肺動脈病変の重症度の比較が詳細にできないので, 本研究では肺動脈病変の重症度の評価はその他に独自に定めたindex of pulmonary vascular disease(IPVD)により行った. その結果, TGAでは生後6カ月になるまでは肺動脈圧が上昇しても, 肺動脈病変の進展は著明ではなく, CSDと同じ傾向にあった. ところが, CSDでは生後27カ月の症例ではじめて高度のIPVDが認められたのに対し, TGAでは6カ月頃より, 特に2群で, 加齢に伴って肺動脈病変の急激な進展がみられた. この結果から, TGAでは肺高血圧症に際してCSDより早期に, 生後6カ月頃から, 加齢に相応して重篤な肺動脈病変が出現するという結論を得た. また, TGA, CSDともに肺動脈圧の上昇に伴って肺動脈病変も重篤になることが明らかになったが, 6カ月以上例ではTGAとCSDの症例を同じ程度の肺動脈圧で比較した場合, TGAの方がCSDより高いIPVDを示した. この結果, TGAでは生後6カ月をすぎるとCSDよりかなり低い肺動脈圧のもとでも重篤な肺動脈病変が発生するという結論を得た. |