Abstract : |
バイパス併用超低体温法および単純超低体温法による開心術後における血清酵素の変動について検討を加えた. 症例を(1)心室切開を伴うバイパス併用群, (2)心室切開を伴わないバイパス併用群, (3)心室切開を伴う単純超低体温群, (4)心室切開を伴わない単純超低体温群, (5)軽度低体温群, (6)常温対照群に分類し, 術前および術後第1, 第3, 第7病日のGOT・GPT・CPK・LDH・LDHアイソザイムの値を測定し各群について比較検討した. その結果, 1)術後GOT・LDH・CPKは術前に比して増加するがGPTは正常範囲内にとどまる. 2)CPKは各群とも同じような増加を示すが, GOT・LDHに関しては開心術群と非開心術群との間に有意差をみとめる. 3)心室切開群と非心室切開群との間に有意差をみとめない. 4)GOT・LDH・CPKに関してはバイパス併用群と単純超低体温群の間に有意差をみとめない. 5)LDHアイソザイムは各分画とも増加するが, とくにLDH5の増加が著しい. 6)LDH5の増加の原因としては(1)手術による骨格筋の損傷, (2)表面冷却ならびに循環遮断による肝・骨格筋の循環障害が考えられる. 結局, バイパス併用超低体温群と単純超低体温群との間には術後の血清酵素の変動に関して本質的な差はないものと考えられる. |