Abstract : |
体外循環の病態生理を解明し, 生理的で安全な体外循環を確立するため体外循環下開心術を施行した70症例について, カテコールアミン動態とその影響の面より系統的な研究を行った. 血漿および尿中カテコールアミンは体外循環中に分泌増加が認められ, 術後早期においてもなお同様の傾向が認められたが, 右心房壁のカテコールアミンは体外循環前後で有意の減少は認められなかった. このカテコールアミンの分泌増加と体外循環中にみられた高血糖, 低インスリン血症, 高遊離脂肪酸血症, 中性脂肪の抑制および体外循環30分以後の低カリウム血症との間には有意の相関関係が認められ, これらにカテコールアミンの関与が考えられた. また体外循環30分以後の末梢血管抵抗の増加と血漿ノルエピネフリン濃度との間にも有意の関係が認められた. 一方腎機能は体外循環中は正常範囲を示したが, 術終了当日の腎機能障害の程度と血漿および尿中ノルエピネフリン濃度との間に有意の相関関係が認められた. NYHA機能分類による重症度と血漿および尿中カテコールアミンとの間には, 重症度の進行に比較してその分泌増加が認められたが, IV度ではIII度, III~IV度に比して分泌低下が認められた. 右心房壁カテコールアミンは重症度とは逆に重症度が進むにつれその減少を認めた. また長時間体外循環例では血漿および尿中カテコールアミンの枯渇とも考えられる著しい減少を示した例が認められこの面からは体外循環時間は4時間をこさないことが望ましいと考えられた. 開心術後不整脈例では, 血漿および尿中カテコールアミンの分泌増加と過遊離脂肪酸血症を高率に伴っていることが判明し, これらの間に関連性が認められた. |