Abstract : |
縦隔に腫瘤性陰影を呈する疾患は炎症性疾患, 腫瘍, 血管疾患など, 性格を異にする多種のものが存在する. そこで著者はnon-invasiveな診断手段として, 腫瘤描画を目的とした75Se-セレノメチオニンによるRadioisotope診断法をとりあげ, 縦隔疾患に対する診断能力を検討した. 縦隔疾患および要鑑別症例59例および正常人対照5例, 計64例を対象とし, 75Se-セレノメチオニン2~3μCi/kgを肘静脈に注入したのち, 原則として注入1時間後にスキャンを施行した. なお9例についてはスキャン像の経時的変化を観察し, 8例については摘出標本のスキャンを施行した. さらに6症例については全血と血清, 血球のカウント数の経時的変化を観察した. 結果として, 75Se-セレノメチオニンによる縦隔シンチスキャンニング施行時期は, 投与後1時間が適当であり, 下部縦隔に異常のあるものは, 24時間後が適当である. 本法によって陽性を呈した疾患は, 胸腺腫, 実質性奇形腫, 悪性リンパ腫, Castleman's tumor, 上皮性腫瘍, サルコイドーシス, リンパ節結核, 肥大胸腺であり, 良性神経性腫瘍, 嚢腫性腫瘍, 血管性疾患は全例陰性であった. したがって, 本法により陽性像を認めるものは, その鑑別疾患中, 陰性疾患を除外することができ, この方向で縦隔疾患の診断に有用である. |