アブストラクト(25巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 三尖弁閉鎖症の外科治療に関する実験的ならびに臨床的検討
Subtitle :
Authors : 入山正, 広沢弘七郎
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学第1外科学教室, 日本心臓血圧研究所
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 10
Page : 1288-1305
Year/Month : 1977 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 三尖弁閉鎖症に対する完全右心バイパス術の実験的検討と東京女子医大日本心臓血圧研究所において行われた三尖弁閉鎖症手術症例91例をもとに臨床的検討を行った. 犬を使用しての完全右心バイパス術の急性実験では, 血圧を90mmHg前後に維持するには右房圧をa波で17~22mmHgに保つ必要があった. あらかじめ右房負荷をかけておいた犬では, 右房圧はa波で4.6±1.9mmHgから9.9±2.4mmHgに上昇し, 完全右心バイパス作製後も未処置犬に比べて, より長くかつ安定した血行動態を維持することができ, 右房の潜在機能の賦活化が強く示唆された. 臨床例では, 89例に初回手術に保存的手術を施行し, 完全右心バイパス術は6例(うち4例は以前に保存的手術をうけている)に施行した. 保存的手術は, 完全右心バイパス術に有利な肺血管床の発達, 強い右房機能, 手術手技上将来に不利な条件を残さないなどの配慮が必要である. 以上の実験的ならびに臨床的検討から下記のごとく三尖弁閉鎖症の治療方針を明らかにした. 1)肺血流量減少群に対しては, 救命的保存的手術として肺血流量の増加と適度の右房負荷によるその潜在機能の賦活化を期待して, Blalock-Taussig手術を第1選択とする. 右房不全や洞調律の維持が困難なときは, 心房間交通の拡大術やGlenn手術を考慮する. 2)完全右心バイパス術は, おおよそ4, 5歳以上で, 肺血管抵抗の高くないことを原則とする. 大血管転位がなく自己の肺動脈弁が発達している症例では, 右房-低形成右室を人工血管でバイパスする簡略な術式が可能である. 下大静脈右房開口部への弁挿入はほとんどの症例で不要と考える. 心房中隔欠損はパッチで閉鎖すべきである. 3)肺血流量増加群に対しては, 肺動脈絞扼術を行い, 心房不全の強いときは心房間交通の拡大術を追加する. 心室中隔欠損の閉鎖傾向に対して十分な経過観察が必要である.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 三尖弁閉鎖症, 救命的保存的手術, 完全右心バイパス術, 右房負荷と右房機能
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