Abstract : |
37例の30歳以上の心房二次中隔欠損症に対し開心術を行い, 手術成績は満足すべきものであったが, その術前, 術後の状態には若年者と異なる点が多かった. 本論文ではまずその37例の経験について述べ, 次いで2歳から52歳迄の症例107例を分析し, 加齢による変化から見た高齢者ASDでの特徴について述べた. 1)30歳以上の37例において, 術前のNYHA分類での重症度とよく相関するのはCTRの増大, frontal QRS axisの左方への偏位, RVEDPとRAmの上昇であり, また高齢者でもQp/QS3≧3.0の大短絡症例が54.1%と過半数であった. 術後合併症では胸水貯留と不整脈の発生が特徴的であったが, そのための死亡例はなく, また術後の新たな持続性不整脈の発生は稀であった. 術後1年間の経過から見るとCTRおよびR or R' in V1の改善は悪く, またSV1+RV5(6)の増大, P-terminal force in V1の低下が新たに認めれらた. 心電図上myocardial damageはいずれも改善ないしは消失した. 2)2歳から52歳迄の107例を年代別に比較し, 加齢による変化を検討した. 術前では加齢による変化はCTRの増大, 不整脈, myocardial damageの発生, RVEDP, RAmの上昇が特徴であり, SV1+RV5(6)は高齢者ではむしろ減少していた. Qp/Qsは30歳代で最も大きかった. RVsp, Rp/Rsには有意の変化は認められなかった. 術後1年間の経過ではCTR, R or R' in V1の改善は加齢とともに悪化し, また高齢者ではSV1+RV5(6), P-terminal force in V1の変化から術後の左室, 左房負荷が推測された. 高齢者においても術後の運動機能の改善は良好ではあるが, 術後心機能の低下が潜在し, とくに左室, 左房負荷が存在する症例が多いと考えられ, 慎重な術後経過の観察が必要であると考えられる. |