Abstract : |
右心室腔内に, 異常筋束ないしは異常筋塊があり, 狭窄性病変を呈することは決してまれではない. これらの変化は, 一定の類型を示す一方, 相互の移行型や重なり合いがあってvarietyに富む. 私どもは43例について, 手術所見, 右室造影所見, 右心カテーテル検査所見の3手段に. より, 私ども独自の分類法にしたがい, 病型分類を試みた. 狭窄性病変は, sinus, cono-ventricular junctionおよびconusの各部位において, それぞれに固有な筋肉成分が異常に発達して生じたものと理解されている. 臨床例での実態は, 各部位での狭窄性変化の程度, 相互の重なり合い, 範囲などに差異があり, 病型を判然と決定することが困難である. 43例についての分類結果は, sinusの狭窄(I型)を伴うものが31例(72%), そのうち多量の筋塊により, 右心室が低位で2分された, いわゆる右室二腔症の典型的な病型(Ia, b, c型)が7例あった. 一方, cono-ventricular junctionの狭窄(II型)は, I型と共存するものを含めて35例(81%)に認められた. したがって, sinusの狭窄である右室二腔症的なものと, II型, すなわち, 漏斗部狭窄とを区別することは臨床的に無意味と思われる. 私どもは, 右心室腔内の狭窄性変化をすべて総括し, 「右心室腔狭窄症候群(Obstruction syndrome of the right ventricle)」と命名し, 病型については, Ia, b, c+II, あるいは, Ia+II+IIIの如く附記することが妥当であると考える. また, 本症候群の発生について, 右心室壁構成筋肉の異常発達という, Grantらの説明だけでは十分でなく, 私どもは, 発生初期における吸収障害の機序も加味して解釈すべきことを自験例, ならびに文献的考察に基づいて提唱したい. |