Abstract : |
体外循環下開心術に, おける電解質代謝は, 血液の希釈, 低体温, pHの変動, 利尿, 大量のACD血輸血などの影響をうけ, 大きく変動する. 血清Caは心筋収縮時に関与し, 持続する低Ca血症は, 血液凝固障害にもつながるが, これらの生物学的な働きをするイオン化Caについては, あまり研究されていない. 最近, イオン電極が開発され, その臨床応用も可能となってきた. 本研究はこのイオン電極法を用い, 開心術症例38例に対し, 血清および尿中の総Ca, イオン化Caの変動を調べ, 他の諸因子との関連について検討を加えた. その結果, 次の知見を得た. (1)血清総Ca値は体外循環開始後25%の減少をきたし, 以後は血清総蛋白量の変動と類似した. これは, 希釈による影響と考えられ, さらに総Caの一部分が血清蛋白と結合しているためと思われる. (2)血清イオン化Caの変動は軽度で, 18%の減少であった. これはpHやParathyroid Hormoneが関与しているためと思われる. しかし, 術後に使用するACD血輸血の影響でイオン化Caの低値はつづいた. (3)充填液内にグルコン酸Caを加えた場合は, 総Ca, イオン化Caともに安定した値を得ることができた. (4)体外循環中はCaの尿中排泄の増加をみたが, 循環後は減少した. (5)総Ca, イオン化Caともに低体温の影響はみられなかった. |