Abstract : |
胸腔持続吸引は, 一般にOverholt氏2連瓶法が用いられているが, この方法では胸腔内圧が吸引圧よりも強陰圧となる場合には, 外気胸を生ずる. 一旦気胸を生じても気道の閉塞がなく, 肺のコンプライアンスが不変であれば, 同じ吸引圧で肺の再膨張は得られるはずであるが, 気胸を生ずると気胸側肺からの呼出量が低下し, 充分な喀痰喀出が得られず, その結果無気肺が進行すると考えられる. 吸引圧を, 強陰圧とすれば外気胸は生じないであろうが, 後出血や肺瘻の危険および患者の不快感が問題となる. これを解決するために著者らは, 2連瓶法の装置に, 逆流阻血弁と安全圧装置を組み入れることを考案した. 逆流阻止弁としては, Jバルブ(貯水瓶と吸引圧調節器の間に入れる)か, Heimlich flutter valve(胸腔ドレーンと貯水瓶の間に入れる)を使用する. 安全圧装置は水圧差を利用したもので, 胸腔ドレーンと逆流阻止弁の間に入れる. 本装置によれば, 胸腔内圧が吸引圧よりも陰圧となった場合には逆流阻止弁が閉じて外気の逆流を防止し, さらに胸腔内が強い陰圧となった場合には安全圧装置から外気の逆流がおこり気胸を生ずることによって胸腔内が過陰圧となることを防ぐ. 肺全剔除術後には, 通常-5cmH2Oの持続吸引がなされているが, 安静換気においても外気逆流がみられ, 深吸気時には吸気量の約1/3にあたる外気逆流が生ずる. 著者らの吸引法によれば, 換気の効率が改善され, かつ排液も良好である. 著者らの考案した低圧持続吸引法の効用はつぎの3点である. (1)逆流阻止弁により外気胸を防止する. このため吸引圧を常に強陰圧とすることなく肺の再膨張が良好となる, これは有効な咳を可能とし, 無気肺を防ぐ. また, 安全圧装置により胸腔内が過陰圧となることを防止する. (2)肺全剔除術後にも使用可能で換気効率を改善しうる. (3)安全圧装置により, 胸腔内圧の測定ができる. |