Abstract : |
無血視野, 心筋トーヌスのない完全静止視野は手術が容易であり, 複雑な心内操作も正確に行うことができ心臓外科医の望むところである. しかし常温のAnoxic Arrestでは心筋の阻止性不可逆性変化も短時間内に発生し, それが術後の心機能に重大な悪影響をもたらすなどその時間的安全許容限界が問題とされていることから, 本法実施にあたり充分な時間的余裕を可能とする適当な心筋保護操作を加えるべきであると考える. 剔出心臓の保存実験では, これまで教室で実施検討されてきた4℃冷却Modified Krebs液による冷却潅流で心臓のViabilityを24時間以上にわたり良好に保存可能であることを明らかにしたが, この方法を基礎として新しい実用的な心筋保護法の開発を目的に動物実験を行った. すなわち阻止停止状態の心臓を冷却したModified Krebs液で大動脈基部穿刺法により潅流冷却し, 心筋Viability低下を抑制し心機能を良好に維持せしめる方法を考究した. とくに本論文では本法と電気的誘発細動法との比較を中心に検討を加えた. 両者の間には心臓蘇生拍動再開後の血行力学的検査成績では有意の差は認められなかったものの, 血中酵素学的, 光顕的, 電顕的検索では明らかに細動法よりも心臓冷却潅流法が優れた結果をしめしており, 本法は新しい心筋保護法として極めて有用な手段となりうることが証明された. |