Abstract : |
昭和41年9月以降新潟大学第2外科および関連病院でStarr-Edwardsボール弁で大動脈弁, 大動脈弁兼僧帽弁および僧帽弁兼三尖弁置換をうけ, 昭和51年9月で1年以上経過した症例はそれぞれ58例, 36例および22例であるが, 遠隔期生存は39例, 23例, 13例である. これらを対象とし使用人工弁の種類(非被覆弁あるいは被覆弁), 血栓塞栓症, 抗凝固療法につき関連性を検討した. 大動脈弁非被覆弁置換12例にそれぞれType I(一過性脳神経障害)1例, Type II(脳塞栓)1例を, 被覆弁置賜27例ではType I 2例, Type II 1例を経験し, かつ遠隔死5例のうち2例は塞栓死であった. これらの症例は1例を除きWarfarin中止後か, Dipyridamole(抗血小板療法)使用中に発作を生じたため抗凝固療法を継続することの重要性を示唆するが, 他方, 現在実施されている抗凝固療法の状況から考察すると, 追跡症例39例中Warfarin単独, あるいはBucolomeの併用例は14例, Dipyridamole使用例9例, 中止あるいは非使用16例となり, 積極的な抗凝固療法は全体の36%に実施されているに過ぎず, 再発作を1例も経験していないことから僧帽弁置換症例と異なり適切な抗凝固療法が術後一定期間施行されるのみで十分であるとの根拠を与えると考える. 2弁置換症例で非被覆弁のみ, あるいは非被覆弁と被覆弁の組み合せの症例は少く, この問題を論ずることは難しいが, 被覆弁のみによる置換例を含め, 昭和48年以後WarfarinでT.T,O値が安定できない場合, 積極的にBucolomeを併用してT.T.O値を治療域に安定することを試みており, 成績の改善が認められている. |