Abstract : |
心筋梗塞に頻発した塞栓症と難治性の心室性期外収縮をきたした症例に対して, 梗塞発作後6ヵ月目に左室前壁に認められた瘢痕化心筋の切除術Scartectomyを行い, 劇的な改善がえられたので, 若干の文献的考察を加えて報告した. 症例は51歳男子, 心筋梗塞発作後3回にわたる塞栓症と薬物に抵抗する心室性期外収縮が認められたが, これらは左室造影により証明された左室前壁の無収縮部akinetic areaがfocusとなって生じているものと考え, この部を切除するならば, 症状の改善が期待できるものと判断し, Scartetomyを行った. 手術は体外循環下, local cardiac hypothermiaのもとに, 瘢痕化心筋を5×3cmにわたり切除したのち, 切除縁の両側からTeflon feltを補強し, 心筋を縫合閉鎖した. 術後, 梗塞による上述の副作用は全く消失し, 順調な経過をたどった. 本症例のごとく, asynergic areaがtriggerとなって種々の難治性の副作用をひき起こす症例に対しては, むしろ積極的にScartectomyを行う適応ではないかと考える. この論文では, 本症例の臨床経過を中心に詳述するとともに, 1)Asynergyの定義, 2)Scartectomyの手術適応および術式, 3)Scartectomyの成績についても言及し, さらに, 4)Scartectomyと心室瘤切除術ventricular aneurysmectomyの成績の差異について, 病態生理学酌な見知から論述した. |