Abstract : |
急性心筋梗塞後心室中隔穿孔における障害左室の過負荷の軽減と肺血流量の可及的正常化をはかる新しい手段としてballoonカテーテルによる肺動脈バンディング法を考案した. 本症に対する肺動脈バンディングの効果を, 急性心筋梗塞後心室中隔穿孔モデル作成犬を用いて循環動態, 心筋代謝の両面から検討し以下の結果を得た. 1)右室圧負荷(約60~70mmHg)により, 右室拡張末期圧は5.5±0.8mmHg(mean±SEM)から8.1±1.0mmHgに上昇したが(P<0.001, n=7), 肺t対体血流量比は1.9±0.1から1.3±0.1に低下し(P<0.001, n=7), 左室拡張末期圧は7.5±1.1mmHgから6.5±1.4mmHgに低下した(p<0.001, n=7). 左室一回仕事量は左-右短絡作成(肺対体血流量比で1.9±0.1)によって149±11%controlに増大し(P<0.001, n=8), 肺動脈バンディングによって116±10%controlに軽減した(P<0.001, n=7). 2)左-右短絡作成(肺対体血流量比で2.9±0.3)により, 心筋酸素消費量は140±13%controlに増加し, 肺動脈バンディングによる左-右短絡量の減少(肺対体血流量比で2.2±0.2, P<0.001, n=8)とともに心筋酸素消費量も114±8%controlに減少した(P<0.005, n=8). 以上の結果から, 肺動脈バンディング法は, 循環動態のみならず心筋代謝の面からも, 心筋梗塞後心室中隔穿孔における障害左室の過負荷の軽減にきわめて有効な手段であると推論した. 本法は, 今後, 心室中隔穿孔を合併した心筋梗塞の急性期における延命ないし救命効果を一層高めるものと期待される. |