Abstract : |
教室におけるVSD c MR症例75例と雑種成犬12頭を用い, VSD c MR症の血行動態, なかでも左右短絡量と逆流量との関係につき, 臨床と実験モデルの両面より検討し, 以下の成績を得た. (1)臨床例で左右短絡率と左心造影によるMRの程度の間にr=-0.45の関係をみた. また軽度MR群と高度MR群の左右短絡率間に有意な差(P>0.01)を認めた. (2)動物実験ではVSDモデルバイパスの開放(VSD群), MRモデルバイパスの開放(MR群), VSD+MR両モデルバイパスの開放(VSD c MR群)により, 各種心内圧, 血流量は変化した. 特にSBF(大動脈への血流量)はいずれの群でも減少し, その減少率はVSD c MR群, MR群, VSD群の順に大きく, いずれも左室駆出圧の低下によるものであった. (3)左室が大動脈, 右室, 左房に対して行う全仕事率はVSD c MR, MR, VSD群の順に大きく, そのうち大動脈に対する仕事率を有効仕事率とすると, それはVSD, MR, VSD c MR群の順に大きかった. (4)左右短絡量はMRバイパスの, 逆流量はVSDバイパスの開放により減少し, 逆流量の減少量が短絡量のそれより大であった. (5)上記短絡量および逆流量の減少率はVSDおよびMR両バイパスを解放した時点で, SBF, 左右短絡量および逆流量よりなる左室全心拍出量とそれに対応する平均左房圧とが形成する心機能曲線に依存し, 心機能の良い犬では減少率は小さく, 心機能の悪い犬ではその減少率は大であった. 以上の研究により本症の血行動態をある程度解明する事ができた. 特に本症の臨床において大きな問題となる左右短絡量と逆流量との関係については, おのおのが互に他を減少させ, しかもその減少率は各血流量の絶対量ではなく, 短絡量もしくは逆流量が与える心機能の変化に依存する事が明らかとなった. |