アブストラクト(25巻12号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 冷却液冠灌流法に関する実験的研究 とくに左室肥大心に対する保護効果について
Subtitle :
Authors : 大堀克己, 安倍十三夫, 和田寿郎
Authors(kana) :
Organization : 札幌医科大学第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 25
Number : 12
Page : 1610-1621
Year/Month : 1977 / 12
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 左室肥大を伴う心臓疾患の術中において生ずる虚血から心筋を保護する手段として, 冷却液冠潅流法の有効性を実験的に検討した. 実験的に作成した左室肥大犬20頭に対して, 2時間の上行大動脈遮断を行った. 心筋保護群10頭には, この間, 150cmH2Oの圧で0~4℃の乳酸加リンゲル液を間欠的に大動脈根部へ注入して冠潅流を行い, 心内膜下筋層の温度を15℃前後に維持した. 一方, 対照の心筋非保護群10頭にはなんら処置を加えなかったが, 心筋温度は27℃前後で経過した. 以上, 両群のうち, 各5頭は, 血流遮断解除後に心摘出を行い, 光顕, 電顕および組織化学的検索を行った. また, 虚血後の左心室機能の回復を検討するために, 両群の残り各5頭に対して, 体外循環開始前および離脱後に, それぞれ, 心電図, 上行大動脈および左室圧, Peak dp/dt, 心拍出量を測定した. 2時間の虚血中, 総量2,000ml以内の冷却液による間欠的冠潅流で, 心筋温度を13~15℃に維持することができ, また, 心内膜下筋層の温度は, 心外膜下のそれに比較して, 約1℃低く経過した. 心筋保護群の肥大左室筋は, 2時間の虚血後も可逆性の組織学的変化を示すにとどまり, 組織化学的にも対照と同様のSDH活性を保持しており, また左心室機能も虚血前に比較して有意差を認めるまでに回復した. 非保護群では, 心筋温度が2時間の虚血中, 27℃前後に経過し, 組織学的にはミトコンドリア, 核等に著しい変化を認め, 組織化学的にもSDH活性は著明に減少しており, また, 虚血後の有効な心筋収縮も得られなかった. 以上の実験結果より, 心筋温度を15℃前後に維持する冷却液冠潅流法は, 2時間の虚血から, 左室肥大心を心内膜下筋層をも含めて, きわめて有効に保護するものと結論される.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 冷却夜冠潅流法, 左室肥大, 心筋保護, こはく酸脱水素酵素(SDH), 心筋温度
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