Abstract : |
開心術中の心筋保護の良否は左室心内膜下出血性壊死や術後の低心拍出症の発生に大きく関与するが, 教室では昭和48年以来心筋局所冷却法によりこの問題に対処し, 好結果を得てきた. 著者らは本法の有用性, 問題点, さらに安全限界に関して実験的に検討を加えた. 58頭の雑種成犬を体外循環および大動脈遮断中の条件によりI~IX群に分け, 規定の体外循環後心蘇生し, 心機能, 心筋代謝さらに酵素学的に60分間の検討を行った. 常温遮断(IX群)のみでは蘇生率は極めて悪く, これに局所冷却を附加したVIII群の心機能も良好とはいえず不均等冷却が大きく影響していると考えられた. 軽度低体温潅流下局所冷却のI~VI群は蘇生後心機能, 嫌気性代謝の進行に関して間歇冠潅流のみのVII群より良好であり, I~VI群の中では長時間連続遮断のIII群, 肥大心を用いたVI群が蘇生後心機能面で相対的に不良であった. 間歇冠潅流30分施行後に局所冷却法に変更した実験のIV, V群では, 充分に心筋は保護され本法の応用性が証明された. 以上より軽度低体温潅流下に行う局所冷却法は, 簡便でかつ心筋保護に関しても有効な方法であり, 本法による連続大動脈遮断許容時間は個体差を考慮する必要はあるが, 一応90分までは安全と考えられた. |