アブストラクト(28巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 神経症状, とくに前脊髄動脈症候群を合併する解離性大動脈瘤について
Subtitle : 原著
Authors : 鈴木宗平*,**, 関野英二**, 百川健**, 工藤堯史**, 井隼彰夫**, 石塚式夫**, 高橋賢二**, 浜田啓一**, 八木橋信夫**, 相内晋*, 柘植俊夫***, 斉藤重周****
Authors(kana) :
Organization : *青森労災病院外科, **弘前大学第1外科, ***弘前市立病院外科, ****黒石市立病院外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 2
Page : 231-240
Year/Month : 1980 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 神経症状, とくに前脊髄動脈症候群を伴う解離性大動脈瘤について, これまでほとんど検討されていなかった. われわれは, 麻痺を主訴とする患者にも留意して, これまで13例中4例の歩行障害を伴う解離性大動脈瘤を経験し, そのうち2例は典型的な前脊髄動脈症候群であり, 1例でその疑いを持たれた. このような患者では, 中枢神経系の阻血状態という点では薬物療法の禁忌とされ, また, 手術が主訴たる麻痺に対しては何ら改善をもたらすものでなく, かえって術中脊髄阻血による脊髄症状の増悪が懸念される点では手術も逡巡されることとなり, 治療方針決定がむずかしい. しかし, 自験例および文献的考察からは, 前脊髄動脈症候群が本症においても一時的脊髄阻血を基礎として発症し, 脊髄の既に変性を受けた部分以外では, かなり良好に循環が保たれていると考えられ, 薬物療法も禁忌とはならず, 低体温併用などの補助手段を用いることで手術も可能と思われる. 前脊髄動脈症候群が発症後に症状改善が見られ, いずれ機能訓練を必要とすることからいえば, その際の血圧変動に対処するために, むしろ手術によって病変の進行を防止することが望ましい. しかし, 機能訓練中の血圧管理にはかなり困難な点が多い. われわれの症例中, 非麻痺のIII型で破裂孔閉鎖, 強靱な解離腔壁を2重に重層して内膜を包絡するという, 一見姑息的な方法で手術しながら, 術後の血圧管理が良好で4年3ヵ月再発を見ない例がある一方, 人工血管で置換した麻痺例が機能訓練中の血圧管理が困難で2年3ヵ月後に再発死亡した例がある. 術後においても薬物療法の持続併用による厳重な血圧管理を力説するところであるが, 機能訓練における血圧管理については今後検討されるべき問題と思われる.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 解離性大動脈瘤, 前脊髄動脈症候群, 解離性知覚障害, 神経症状, 歩行障害
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