Abstract : |
胸部食道癌切除術に際し, 胸腔内上縦隔リンパ節の廓清と併せて, 頚部リンパ節の廓清の必要性の有無を, 手術侵襲の大きさの程度および頚部リンパ節転移の実態の病理組織学的検索の面から検討し, 限局的頚部廓清の必要性および妥当性を論じた. すなわち胸腔内および腹腔内リンパ節を一応系統的に廓清した胸部食道癌36例を, 頚部下内深頚リンパ節(104)を両側共廓清(頚部限局廓清)した14例と, 左側104のみを廓清した7例, 頚部廓清を全く行っていない15例に分け検討した. 104への癌転移率は右側が14例中4例(28.6%), 左側が21例中4例(19.1%)で, 上縦隔リンパ節転移率(13.9%)よりやや高率であった. これら104リンパ節転移7例のうち6例は術前経皮的には触知しえない微小癌転移巣であり, 7例中4例に上縦隔リンパ節転移がみられ, 他の3例では, 胸腔内リンパ節には全く転移がなく左側104のみに跳躍転移が認められたものが2例, 右側104及び腹腔リンパ節のみに跳躍転移があったものが1例であった. また上中縦隔リンパ節に転移のあったもの5例中4例に頚部(104)にも転移が認められ, 中下縦隔リンパ節に転移のあった4例では全例に腹腔内リンパ節にも転移が認められた. 結局胸腔内リンパ節のみに転移が限られているものは9例中1例(11.1%)にすぎなかった. 以上の事実から胸部食道癌においては, 胸腔内及び腹腔内リンパ節の廓清は勿論のこと, 頚部の初期転移巣である両側下内深頚リンパ節(104)の限局的廓清の必要のあることを痛感した. 最近ではroutineにこれを施行しており, 通常右側が20~25個, 左側が15~20個の小リンパ節を廓清可能となっている. |