アブストラクト(28巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 心臓外傷に関する臨床的検討
Subtitle : 原著
Authors : 益子邦洋, 金沢正邦, 山本保博, 辺見弘, 大塚敏文, 池下正敏*, 中條能正*, 田中茂夫*, 山手昇*, 庄司佑*
Authors(kana) :
Organization : 日本医科大学救命救急センター, *日本医科大学胸部外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 2
Page : 278-291
Year/Month : 1980 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : われわれの施設で経験した23例の心臓外傷の内訳は, 穿通性心臓外傷9例, 非穿通性心臓外傷11例, 医原性心臓外傷2例, 心臓異物1例である. 穿通性心臓外傷はいずれも刺創で, 損傷部位は左心室3例, 右心室2例, 心室中隔1例, 心膜4例であった. これら9例のうち8例に開胸手術を行ったが全例救命しえた. 非穿通性心臓外傷は交通外傷7例, 転落4例で, 損傷別には心臓破裂1例, 心膜破裂3例, 心筋挫傷8例である. 心膜破裂3例中1例には心左方脱出を認めた. これら11例の非穿通性心臓外傷のうち6例は重篤な出血性ショックあるいは他の合併損傷により失った. 医原性心臓外傷の2例はいずれも心臓カテーテルにて左心房を穿通したものであるが, このうち1例は基礎疾患に対する根治手術施行後LOSのために失った. 心臓異物の1例は下大静脈から右肺動脈に至る長さ40cmのCVPカテーテル遺残であるが, 心内膜生検用鉗子により摘出・除去に成功した. 入室時諸検査の検討では, 血圧低下, 頻脈, 呼吸速迫, 低酸素血症, 代謝性アシドーシスを認め, 胸部レ線では心拡大, 血胸, 気胸, 皮下気腫, 肋骨や鎖骨の骨折, 心嚢気腫, 肺挫傷を認め, また心電図では洞性頻脈, ST上昇をはじめ種々の異常を認めた. 合併損傷では穿通性9例中6例に肺損傷を認め, 非穿通性心臓外傷では多部位にわたる合併損傷を認めた. 非穿通性心臓外傷の増加に伴い, 最近注目されるようになった心筋挫傷という概念は, 軽症のものから極めて重篤なものまでを含むため, これを一括して表現することは必ずしも妥当であるとはいえず, われわれはこれを臨床症状から3型に分類するのが良いと考えている. すなわちI型は特に治療を必要としない軽症例であり, II型は心タンポナーデ型, III型は心原性ショック型である. われわれの経験した心筋挫傷8例の内訳は, I型2例, II型5例, III型1例であった.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 穿通性心臓外傷, 非穿通性心臓外傷, 医原性心臓外傷, 心臓異物, 心筋挫傷
このページの一番上へ