Abstract : |
虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術において, 一般に開存率の点では内胸動脈グラフト(IMAG)は自家静脈によるA-Cバイパスグラフト(ACG)より優るとされているが, 両者の血行力学的な差異についてはなお論議のあるところである. 心筋の酸素需要を増加させた際のIMAGの血行力学上の特性を本来の左冠動脈前下行枝(LAD)をコントロールにし, ACGと比較検討した. 実験的に雑種成犬を開胸下に自然拍動からペーシングにより段階的に心拍数を増加させ, 各時点での左冠動脈前下行枝血流量, 左心機能, DPTI/TTI ratioを測定した. ついで大腿動脈片を用いてA-Cバイパスを作製し, 左内胸動脈末梢端をその末梢端に吻合しcomposite graftを作製した. このようにしてペーシング下における両者のグラフトの血行力学上の差異を同一血管床で比較検討した. その結果, 平均血流量, max dp/dt, LVEDP, の変化には両者の間に差は認められなかった. DPTI/TTI ratioはLAD, ACG, IMAGとも心拍数の増加に従って減少するが, LAD, ACGは心拍数180/minまで0.7以上を保つのに対し, IMAGは心拍数130/minですでに0.7に下降した. 以上の結果より, LADに対するバイパスグラフトとして, IMAGはACGに比較して頻脈早期にDPTI/TTI ratioが低下し, 心筋酸素supply-demand ratioの点で劣るものと考えられる. |