Abstract : |
体外循環下開心術では, 体外循環に伴う種々の影響が生じる. そのうち, 術後の消化管出血, 嘔吐, 下痢などの消化器系の合併症への対処に役立つと考え, 消化器系ホルモンおよび酵素の変動について検討した. 体外循環化開心術例17例の術中, 術後の胃液, ガストリン, アミラーゼ, インシュリン, グルカゴンの変動を検討し, 下記の結果を得た. 1)胃液量, 胃液酸度は術後18時間まで上昇を示した. 胃液量, 胃液酸度とガストリンとはよく相関していた. このことは, 術後1日目で開心術症例の多くが消化管出血を生じやすい条件におかれていることを示すと考える. 2)ガストリン, アミラーゼ, インシュリン, グルガゴンは類似した変動を示し, 術後1日目に最高値に達し, その後, しだいに低下した. 3)ガストリンとアミラーゼの間に明らかな相関関係を認めた. ガストリンとインシュリンはr=0.46で相関は示さないが相関に近い値を示した. ガストリンとグルカゴンは, 期待された拮抗関係を認めなかった. 4)ガストリンと体外循環の諸条件との関係を検討したが, 体外循環時間, 稀釈率, 最低直腸温とガストリンの間に相関を認めなかった. 体表面積, 手術時間, 術後の動脈血のガス分析の結果などとの間にも相関はなかった. 循環中の平均動脈圧とガストリンの間にr=-0.21と負の相関係数をみたことは興味ある点と考える. ガストリンは体外循環中に分泌低下を示し術後分泌亢進を生じた. 他の3者にも同様な傾向はみられた. 以上の点で, 術後のガストリン分泌亢進は, 循環中の血流減少などの生理的条件が胃粘膜に働き分泌低下を生じ, 後にこの反動として分泌亢進をもたらしたものと考える. |