Abstract : |
僧帽弁膜症の術後には, 心房細動等の不整脈が発生することが多く, 時にはこの不整脈がLOSを誘致して致命的となることもある. そこで, 僧帽弁膜症術後の心房細動時のstroke volumeをimpedance法により, 各拍動ごとに測定し, cardiac outputに及ぼす影響を検討した. まず, MVR例の術後経過をみると, 洞調律例では術後第1病日からCIが2.5l/m2/min以上を示したのに比し, 心房細動例では術後第1病日には2.5l/m2/min以下の症例が多く, しかもCIの回復に日時を要した. 一方, 術後心房細動から洞調律に移行した5例についてみると, 心房細動時よりも洞調律時の方が, CIが10~56%(平均26%)多い事実が判明した. 次に, 先行R-R間隔がSVおよびCIに及ぼす影響をみると, SVが極端に減少し10ml以下となる先行R-R間隔は, 交連切開例では0.4sec, Starr-Edwardsディスク弁によるMVR例では0.5sec, Starr-Edwardsディスク弁によるMVR+TVR例では0.6secであった. 一方, Hancock porcine xenograftによるMVR例では, 先行R-R間隔が0.5sec以下であっても, SVが10ml以上の拍動が多く見られた. 以上の結果, 僧帽弁膜症術後の心房細動例では, 上述の限界以下のR-R間隔の拍動が多発する時には, COは減少することが判明した. このような事実は, MVR+TVR例で著明であった. 一方, Hancock弁は, Starr-Edwardsディスク弁よりも頻脈時には有利であることが判明した. 強心剤投与によるSVの変動をみると, isoproterenol投与では, 一般に同一先行R-R間隔の拍動のSVは増加し, かつ脈拍数も増加し, COも増加した. しかし, 先行R-R間隔が0.6sec以下の拍動が多く見られる状態では, COはかえって減少した. ジギタリス剤の投与では, 先行R-R間隔の延長に伴うSVの増加が著明であると同時に, 先行R-R間隔が0.6sec以下という拍動が減少することも, COを増加せしめる一因となった. したがって, 先行R-R間隔が0.6sec以下の拍動が多くみられる症例において, ジギタリス剤の効果が最も著明であった. |