アブストラクト(28巻8号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 体外循環下開心術の糖代謝へ及ぼす影響に関する研究-とくに経静脈的糖負荷試験とGIK療法について-
Subtitle : 原著
Authors : 衣笠陽一, 勝村達喜
Authors(kana) :
Organization : 川崎医科大学胸部心臓血管外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 8
Page : 1264-1273
Year/Month : 1980 / 8
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 体外循環を使用し開心術を行った症例では, 一過性の高血糖, 高アミラーゼ血症など糖代謝の異常をみることが多い. このことから体外循環の糖代謝に及ぼす影響を, 64例の開心術症例について, 他の開胸術を行った18例を対照として比較検討し, 以下の結論を得た. 1)血中および尿中アミラーゼ値は, 開心術症例では体外循環中低下し, 術後第1日目には逆に平均1,370IU/lおよび4,000IU/lと高値を示した. その全例が唾液腺型高アミラーゼ血症であった. リパーゼは特異的変化を示さず, 膵炎様臨床症状を呈した例は皆無であり, 膵臓に対する体外循環の影響は軽微であると思われた. 2)血糖値は手術開始とともに上昇し, インスリン値は逆に低下をきたし, 術後は血糖は漸減していくが, インスリンは上昇していき術後第1日目で最高値をとる. これらの糖代謝の異常にはカテコールアミンとくにノルアドレナリンが大きな役割を果たしていると考えられた. 3)体外循環時間と糖代謝との間には相関々係を見出しえなかった. 4)術前と術後1日目に経静脈的糖負荷試験(IVGTT)を行うと, 糖の減衰率Kは対照群では術前1.79から術後1.40へ, 開心術症例では1.63から0.79へ低下した. すなわち開心術々後はインスリン反応の遅延や, インスリン作用の抑制などが認められ, 耐糖能が低下していた. 5)体外循環中回路内にブドウ糖・インスリン・カリウム(GIK)を24例に投与した. 体外循環30分でインスリンは301μU/ml, 60分で血糖は702mg/dlと著明な高値を示すにもかかわらず, 術後第1日目では血糖・インスリンとも, GIK非投与群より低値を示した. IVGTTにおいてもGIK投与群では術後はK=1.04と糖の減衰率は非投与群より高まり, インスリンも早い減衰曲線を示した. 以上のことからGIKは糖の利用を高め, その投与は臨床的に有意義なものと思われた.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 体外循環, 糖代謝, アミラーゼ, 経静脈的糖負荷試験(IVGTT), GIK療法
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