Abstract : |
1968年以来, 右心流出路形成の不良なFallot四徴症に対し, 右室から肺動脈弁輪を越えてパッチによる流出路形成を要する場合, 自家心膜弁つきパッチを工夫し, 流出路狭窄の解除と肺動脈弁逆流の防止を図ってきた. 弁つきパッチによる流出路再建例48例を検討し, 本症外科治療について若干の考察を加えた. 対象例の根治手術時年齢10.4±7.4歳, 体重28.4±16.5kg, ヘモグロビン値19.3±3.2g/dlであった. 65%は一期的根治例, 35%はBlalock吻合を先行さす二期的根治例であった. また81%は, PA/AO比0.50以下であった. 全例に弁つきパッチによる流出路再建を含むFallot四徴症根治手術を施行した. 生存32例の運動能力はNYHA I°28例, II°3例, III°1例, IV°0例であった. 右室/左室収縮期圧比は術直後0.51±0.14, 退院時0.49±0.09, 遠隔期にはさらに低下傾向がみられた. 肺動脈-右室拡張期圧較差は, 退院時6.2±3.9mmHg, 全体の32%で遠隔期に0迄下降したが, 68%は有意の拡張期圧較差を有していた. 運動負荷時の心拍数, 心係数の増加は正常例が多かった. 負荷時の右室拡張終期圧の上昇, 拍出係数の低下は少数例でみられた. 負荷時の右心室機能曲線上, 肺動脈弁逆流例で右室予備力の低下を認めたが, 多くは正常な予備力を示した. 造影上3例で流出路軽度拡張を認めたが, 瘤状拡張はなかった. 結論:(1)弁つきパッチによる流出路再建例は, 狭窄除去の点で満足すべき血行動態を示した. (2)中等度以上の肺動脈弁逆流は, 末梢肺動脈遺残狭窄例や過大なパッチ例に散見された. (3)肺動脈弁機能維持上, またパッチの瘤状拡張予防上, 末梢肺動脈狭窄に対する処置, パッチのサイズに対する配慮, 自己肺動脈弁の温存とその発育を促す工夫が大切である. (4)本症は加齢とともに進行性で, 年長児期以降の根治例で運動負荷時の心機能異常が指摘され, 乳幼児期一期的根治手術が望ましいわけだが, かかる乳幼児の右心流出路形成にも, 自家心膜弁つきパッチは応用可能と考える. |