アブストラクト(28巻10号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 鎖骨下動脈肺動脈吻合術の開存性に関する実験的研究
Subtitle : 原著
Authors : 入沢敬夫, 佐藤徹, 今井高二, 片桐幹夫, 中村千春, 小林稔, 白岩邦俊, 鷲尾正彦
Authors(kana) :
Organization : 山形大学医学部第2外科
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 28
Number : 10
Page : 1517-1524
Year/Month : 1980 / 10
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 肺血流量の減少を伴うチアノーゼ性心疾患に対するBlalock-Taussig手術は効果的な術式であると評価されているが, この術式には術後早期あるいは晩期における短絡吻合部の閉塞ないし狭窄の発生という本質的な問題がある. この点に関して, 吻合部狭窄の発生とその防止策の面から実験的研究を行った. 幼犬10頭および成犬4頭を用い, 鎖骨下動脈(主として左側)を肺動脈に端側吻合して短絡を形成した. 吻合に際しては吻合部が鎖骨下動脈外径の1.5倍になることを目安に鎖骨下動脈を縦切開ないし椎骨動脈などの分岐部を利用して吻合部の拡大を計った. 血管の縫合は非吸収性の6-0 Prolene(Polypropylene)糸(6頭), 吸収性の6-0 Dexon(Polyglycolic acid)糸(8頭)を用い, 単純連続縫合で行った. 術後150日の遠隔期に吻合部の状況, 血行動態について検索した. 非吸収性Prolene糸使用では吻合口の拡大を計ったにもかかわらず, 50%以上の吻合部狭窄は半数に発生し, 縫合糸の関与が推測される線維性輪状狭窄であった. 吸収性Dexon糸使用では縫合糸は完全に吸収されており, 吻合部の線維性狭窄の発生は軽微であった. この所見はProlene糸使用の場合とは対照的であり, 発育に伴う吻合部の成長の可能性が示唆された. 吸収性縫合糸の使用では吻合部の治癒過程における抗張力の低下が懸念されるが, 吻合部の破裂や動脈瘤の発生はなかった. このDexon糸の成績はBlalock手術の血管縫合糸として吸収性糸は合目的なものであることを明示した. Blalock手術の短絡量は鎖骨下動脈や吻合部の内径により規制されたが, その短絡率は鎖骨下動脈内径3mm(体重9kg位)では37.3%, 動脈内径4mmでは55.1%, 動脈内径5mmでは72.3%であった. この成績から効果的な短絡量を得るには動脈内径は3mm以上が必要と推測された.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 鎖骨下動脈肺動脈吻合術, 吻合の開存性, 吻合部狭窄, 吸収性縫合糸, 非吸収性縫合糸
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