Authors : |
田中信行, 千葉廸夫, 安達博昭, 乳井誠悦, 山岸真理, 岡本史之, 高田憲一, 大野猛三, 浅井康文, 上田睦, 大堀克己, 数井暉久, 北野一郎, 安倍十三夫, 金子正光, 小松作蔵 |
Abstract : |
1964~1979年12月末日の期間に当教室で施行したAVR中SE 103例, SC 61例, WC 51例, LK 27例と4種類の人工弁を用いた242例のAVR(AVR 187例, AVR+OMC 55例)を研究対象とした. またこの間, 術中の心筋保護法として常温下心筋保護では, (1)anoxic arrest(AA)を22例, (2)coronary perfusion(CP)を136例に用いた. また, 低温下心筋保護では, (3)心膜内ice-slushによる局所冷却(IS)を76例, (4)0~4℃Ringer-Lactate溶液を用いた冠潅流による心筋冷却hypothermic cardioplegia(HC)を8例と4種の異なった心筋保護法を採用してきた. 手術成績では1カ月以内のいわゆる早期死亡は40例(16.5%)でこのうち32例(死亡の80%)が術後low cardiac output syndrome(LOS)に起因する死亡であり, AVRの手術成績の向上は術後LOSの防止が鍵であるという結果をえた. 心筋保護法と大動脈遮断時間, 術後LOSによる死亡率の比較についてみると, 常温下では, CPはAAに比し平均大動脈遮断時間は約2倍に延長しているものの(CP 65.3±20.3, AA 32.2±11.1分, P<0.001), LOSによる死亡は2分の1に減少している(CP 129例中14例10.9% AA 22例中5例22.7%). このことは常温心筋には冠潅流を必要とすることを示している. また低温心筋状態ではHCはISに比較し, 平均大動脈遮断時間は25分間延長しているが, (HC 73.6±12.9(SD), IS 48.2±6.8分, P<0.001)LOSによる死亡率を3.5%減少せしめえた. (HC 8例中1例, 12.5%, IS 75例中10例16.0%). しかし4群間のLOSによる死亡率には有意差は認められなかった. 結論として常温心筋に対するCP, 低温心筋に対するHCによる心筋保護法は, 術後LOSによる死亡率を減少させえた. また, 両者の心筋保護効果を術後GOT, CKの推移からみればほぼ同等の効果を有することが示された. |