Abstract : |
大動脈―冠状動脈バイパス手術中の高血圧は, 他の心臓手術に比べても頻度が多く, 後負荷の軽減を計る何らかの治療が必要である. Ca++ antagonistであるnifedipineは冠血管拡張作用と末梢血管拡張作用から狭心症などの虚血性心疾患々者に使用されており, 大動脈―冠状動脈バイパス手術中平均動脈圧100mmHg以上の高血圧を来した12例にnifedipine 0.4mgを静注して, その効果を検討した. nifedipineにより動脈圧は収縮期, 拡張期とも低下したが, 異常な低血圧を来したものはなかった. 心拍出量は増加し, 末梢血管抵抗は減少し後負荷の軽減に有効に作用した. 心拍数はnifedipine投与直後に増加したが, 15分後には有意な変化ではなかった. 一方肺動脈圧, 肺動脈楔入圧, 右心房圧には変化がなく, nifedipineによって静脈系の容量性血管および肺血管はさほど影響を受けなかった. nifedipineは心筋のCa++に依存する興奮・収縮連関を抑制することから心筋収縮力を減少させることが考えられる. しかし末梢血管拡張作用を示す投与量では心筋収縮力の低下は認められず, Ca剤によりその作用は軽減されるなど, β遮断剤に比べて, より安全に大動脈―冠状動脈バイパス手術中に生じた高血圧に使用できる薬剤である. |