アブストラクト(29巻2号:日本胸部外科学会雑誌)

Title : 食道アカラシアに対する手術術式の検討
Subtitle :
Authors : 木下祐宏, 遠藤光夫, 小林誠一郎
Authors(kana) :
Organization : 東京女子医科大学消化器病センター
Journal : 日本胸部外科学会雑誌
Volume : 29
Number : 2
Page : 202-210
Year/Month : 1981 / 2
Article : 原著
Publisher : 日本胸部外科学会
Abstract : 1678年Thomas Willisが臨床例を報告して以来食道アカラシアに対する実験的研究や治療例の報告は数多いが, まだ根本的な治療法と言われるものは見当たらない. われわれは昭和43年以降54年末までに122例の食道アカラシア症例を経験し, 71例に手術を施行している. このうち初回手術例は59例であるが, これら手術例中Wendel中山の変法を行った症例8例, 同じくHeller中山の変法を行ったもの19例, 胃弁移植下部食道噴門成形術を行った症例は32例である. これらの術式のうちルーチンの手術法としているHeller中山の変法と胃弁移植下部食道噴門成形術について, 手術手技のポイントを解説するとともにこれら手術例の手術効果判定のためアンケートを行って, 手術後患者の自覚症状の程度により, 著効, 有効, 無効の三段階に分類する基準を作製した. また客観的手術効果として術前術後X線所見による判定基準を作り, 両者を含めて手術成績の判定に用いた. その結果術式別の手術成績ではWendel中山の変法で50%の成績良好例が存在したが, Heller中山の変法による手術例では73%, 胃弁移植下部食道噴門成形術の術式で81%の良好例の割合となっていた. また病型別で見ると比較的病状の軽いと思われるSP型あるいは拡張度I度の症例で手術成績良好例が多く, 一番病状の進行したと思われるS型, または拡張度III度の症例に成績良好例は少なかった. また再手術例8例の検討でも初回手術後早期に愁訴の改善を見ない症例では再手術の効果も少なく, 再手術の困難さを考えるとアカラシア手術では初回手術が極めて重要であることがわかった. これらのことからわれわれは手術術式の適応として, あまり拡張度の高くないI度, II度またはX線型でSP型の症例では粘膜や神経を損傷しないHeller中山の変法をまた拡張度II度III度, X線型でF型S型の重症例では胃弁移植下部食道噴門部成形術が適応と考えている.
Practice : 臨床医学:外科系
Keywords : 食道アカラシア, 胃弁移植下部食道成形術, Heller中山変法, 食道アカラシア手術効果判定基準, 食道アカラシア手術成績
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