Abstract : |
A-C bypass例10例, 僧帽弁膜症手術例5例を対象に開心術前後において深部体温計を用いて中枢―末梢温度較差を測定し, 血行動態および血中カテコラミン, レニン活性との関連を検討した. 麻酔導入前にみられた温度較差の中等度の拡大が導入後縮小したが, 心拍出量, 体血管抵抗は変化しなかった. 体外循環離脱後1時間目では温度較差は縮小しており, 低体血管抵抗, 高心拍出状態にあったが, 離脱後3時間目となり, 温度較差は拡大し, 高体血管抵抗, 低心拍出状態となった. しかしながら, 離脱後6時間目にいたり, さらに温度較差の拡大がみられたにもかかわらず体血管抵抗は減少し. 心拍出量は増大した. 温度較差の拡大は離脱後12時間目まで存在し, それ以後縮小傾向となった. 体外循環離脱急性期の中枢―末梢温度較差の一連の変動は類似のパターンを示したが, 血行動態面, 血中カテコラミン, レニン活性とも関連を見出すことができなかった. この温度差の変動は体外循環離脱後の末梢血管そのものの反応性の回復過程を示しているものと考えられた. したがって体外循環離脱後12時間までは中枢―末梢温度較差の拡大をもって必ずしも血行動態の悪化と判断することはできない. |