Abstract : |
肺はガス交換を行う以外に血管作動物質の活性化, 不活性化および放出を行う内分泌臓器として重要な役割を演じている. 種々の血管作動物質のうちangiotensinも肺の代謝と密接な関係を有するものの1つである. すなわち, angiotensin I(以後AIと略する)は肺を通過することにより, その活性型であるangiotensin II(AII)に変換される. このようなangiotensinの肺における代謝が低体温下および一時的循環停止を伴う低体温下開心術においていかに変化し, 低体温時の循環動態にどのような役割を果しているかを検討するためにplasma renin activity(PRA), AI, aldosterone(PA), angiotensin convertig enzyme activity(ACEA), 動脈血AIIおよびAII(橈骨動脈:RA)/AI(下大静脈:IVC)の変動を観察し, 併せて動物実験を行った. すなわち, 雑種成犬を用いて表面冷却低体温下の腎血流量(RBF)を測定し, さらに, in vivoの状態における常温あるいは低体温下の腎におけるangiotensinの代謝を観察した. その結果, 次のごとき結論を得た. 1)低体温下開心術の経過中にもrenin-angiotensin(R-A)系におけるhomeostasisが維持されていた. 2)低温時の血圧維持にはAIIの上昇が重要な役割を演じていると考えられる. 3)低温時には肺におけるangiotensinの代謝機能は低下するが, 腎におけるangiotesinの代謝機能は低下しないことが示唆された. |